(1)初級『管理』




●冬の剪定

 冬の剪定は次の目的で行なわれます。
(1)剪定により残した枝に養分の集中を図り、よい花を咲かせる可能性を高める。
(2)不用の枝を取り除き、樹型・樹高を整える。
 不用の枝とは、枯枝、病虫害を受けた枝、貧弱な枝などで1月ごろに実施します。このことにより、残された幹や枝の採光および通風がよくなり、ばら栽培がよい循環で回りやすくなります。開花を見据えた剪定の時期は3月の前後1週間(町田市の場合)に強剪定を行いますが、その前にかるく病気を受けた枝を取り除くなどの軽剪定を行なっておくと、薬剤使用量の節減にもつながり、一石二鳥です。また、この時の剪定時期が多少異なっても、開花日にはほとんど影響を受けません。

(第46回町田バラ作り教室資料)


 冬の剪定は春のための大事な剪定で、年間を通して最も枝を短く切るのが特徴です。とは言いながら一度にすべてをやろうとはせずに、「せ・ま・き」に基づいて行うことをお勧めします。「せ・ま・き」とは
  整理剪定→間引き剪定→切り戻し剪定
のことで、HT種を中心に考えると次のようになります。
(1)整理剪定
 要らない枝をまず切ります。枯れた枝、細い枝、株の内部の混み合った枝、激しく病気や虫にやられた枝などが対象です。
(2)間引き剪定
 古そうな枝に着目して、根元から切り落としていきます。ベイサルシュートといえども細いものは使えないので、切り落とします。なお、鉢植えなどでもともと枝が少ない場合は、切り落とさずに残す場合もあります。
(3)切り戻し剪定
 2月下旬頃までに整理剪定と間引き選定が終わっていると、残った枝の上部には「良い芽」が出てくるので、そこを見極めながら切り戻し剪定を行います。HTは一本の枝に一花咲かせる、そのためにはどうすればよいかを考えるということが基本になります。

(第145回町田ばら作り教室資料)



●冬の鉢植え灌水

 冬は意外に土が乾燥します。とくに鉢作りは注意が必要です。この時期水遣りを怠ると、大抵枯死させて折角の春を台無しにします。
 3月までの冬の水遣りは、出来るだけ午前中に済ませます。夕方の水遣りでは水分の残りすぎで凍結などによる鉢割れを生じたり、伸び始めの白根を傷め、生育を阻害することがあるためです。
 また、午前中の水遣りは、水が鉢から抜け出る際に、ポンプ作用で新鮮な空気も運び込まれ、根の成長に好影響を与えます。

(第46回町田ばら作り教室資料)



●初春の芽欠き作業

 この作業はHT種に限って行います。芽欠きとは、成長具合や伸びる方向などを見極めて良い芽を選別し、それに養分をできるだけ集中させるため、他の芽を摘むことです。
剪定ばさみを使って切り取るのではなく、手でつまんで芽を取り除きます。芽欠きを実施する時期は、4月に入ってから遅霜の心配がない頃を見計らって行ないます。早めに芽欠きして遅い低温に出会うと、残した芽が傷んで花数が減ってしまうためです。なお、たまたま残した芽がブラインドと分かった場合は、そのステムを根元から切り取らず、先端の方に5枚葉を1つ付けてピンチします。こうすることにより、花時が若干遅くなりますが、そこからまた伸びて花を楽しむことが出来ます。

(第47回町田ばら作り教室資料)



●シュートの管理

 シュートとは、春から秋にかけて伸びてくる太い主幹で、普通の樹木で言うと「徒長枝」に相当する不要の存在とされるものです。しかし「ばら」にとってはこのシュート管理が大変重要となります。というのもばらはこのシュートに花を咲かせるからです。見苦しいからといって根元や途中から出てきたシュートを剪定してしまうと、最悪、株自体が衰弱して大事なばらが枯れ込む事態になることもあります。また、古いシュートは褐色に木化してくると花数が激減するため、豊かな花を楽しむためにも常にこの新しく伸びてきたシュートを生かして、古いシュートは剪定処分するよう枝の世代交代をしてあげなければなりません。
 HT種はこのシュートをそのまま放置すると先端がほうき状になり、大きく見ごたえのある花に育ちません。そこでよい花を咲かせようとシュートの先端をピンチしながら、シュートを2段、3段と繋いでいき、立派な花枝として導いていきます。なお、ツルばらやシュラブ系はシュートに対してピンチは行なわず、ただただまっすぐ上に伸ばして、翌年1月前後にこのシュートを横に誘引固定して、春に咲く花を楽しみます。
 シュートについて特性や注意点をまとめてみますと、
(1)シュートの発生は、発生しやすい品種、発生の悪い品種、途中シュートの発生しやすい品種など、品種によりかなり個性がある。
(2)一般に古いばらの樹より、若い樹(新苗から年数の立っていない)の方がシュートの発生は良い。
(3)株元に日が当たった方がシュートの出は良い。
(4)深植えにするとシュートは出にくい。
(5)健康な樹で健全な葉が多く付いている株はシュートが出やすい。
(6)発生時期に窒素分(N)が多い方がシュートは出やすい。
(7)古木側を切除する場合、シュートの葉数と切除側の葉数をバランスさせるようにする。
(8)シュートピンチした後に展開した葉は、病害虫から守る。
のようになります。

(第48回町田ばら作り教室資料)



●夏の剪定前処理

 剪定前処理とは、秋の剪定を前提にしている作業です。HT種においてはシュートの伸び具合や春の花の咲いたステムを伸ばしたものを含めて、バランスを考えながら古い主幹枝や弱い小枝を切除していきます。バランスとは、茂っている葉数のバランスで、残す枝の葉数より切り取る枝の葉数が多くなっては、ばらの樹にショックがでて、成長が一時止まるなどの弊害が出ます。常に見回って、「常時剪定」とともに「夏の葉は血の一滴」を肝に銘じて作業します。なお、ツルばらについては別項でも触れていますが、シュートが伸びても剪定やピンチは行なわず、丈夫な支柱を立ててそのまままっすぐ天に向けて伸ばします。この作業を怠ると、シュートの先端が風に揺られて枝分かれし、ほうき状になって、年末の誘引作業に支障をきたします。

(第49回町田ばら作り教室資料)



●冬の移植、植付け、鉢の土替え作業

 購入した大苗の植付けや、地植えされた苗の移植、また鉢の土替えは外気温が10℃を越えなくなるこの時期が最適と言えます。ただ、白根が動く時間をできるだけ長く確保するという観点から、11月末から12月末と早めに作業を進めることで、春以降の養分の吸収が違うとも言われています。
 また岡山の日本バラ園では、もっと極端にばらの植え込みを時期を限らず、年中実施し、花を咲かせながらバラ栽培を試みている例もあります。
 鉢の土替えでは取出した苗は水を張ったバケツに入れておき、乾燥を防ぎながら作業を進めます。とくに根を洗うことをする必要はありません。
 大苗の購入では、早すぎる出荷苗には注意しましょう。まだ生育中の10月頃に堀上られ、枝を短く切られて葉をすべて失った大苗は、環境が変わったことによるショックで枯れてしまうこともあります。
(第150回町田ばら作り教室資料)



●花がら剪定

 開花後の花がら摘みも剪定と呼べるでしょう。四季咲き品種は次の花を咲かせるために速やかに花がらを良い芽の上で切り取ります。花がら剪定をするうえで「良い芽」とは、ある程度の太さにあるステムの五枚葉の付け根に潜んでいて、次の花を速やかに咲かせてくれます。したがってよく言われるのは、「花がら剪定は花の側に五枚葉を一枚付けて花がら摘みをする」というのが基本になります。
 しかし、花柄を付けたステムはいつもこのような理想的な状態とは限りません。もう一つの目安としては、「花柄を付けたステムの約半分のところで剪定する」という方法があります。
 いずれにしても、速やかな花がら剪定は二番花を見るという目的の他に、ばらの生殖成長モード(子孫を増やそうとする働き)を脱して栄養成長モード(樹木としての成長)へ移行させる重要な作業といえます。
(第152回町田ばら作り教室資料)



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